自国通貨ペソが急落する中で、アルゼンチン政府がIMFと500億ドルの支援で合意しました。
これは非常に重要な出来事です。
こちらが日経の記事。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31528540Y8A600C1MM0000/?n_cid=NMAIL007
日本にいると、アルゼンチン経済なんてほとんど気になりませんが、
アルゼンチンは、中南米で、ブラジル、メキシコに継ぐ、経済大国であり、
G20のメンバーでもあります。
ちょうど2018年は、G20のサミットがブエノスアイレスで開催予定です。
しかし、G20の中で、一、二を争うぐらい経済不安定な国でもあります。
（写真は、2018年初からのドル(対ペソ)推移）
「なんでペソが急落しているか？」
「そもそもIMFの支援とは？利点・欠点は？」
「なんで国民がIMFからの融資に対してデモを行っているか」
「なぜ合意が重要な出来事なのか？今後どうなるのか？」
という疑問に答えていきましょう。
＜背景＞
・米長期金利の上昇で新興国から資本が流出している
この流れはどの新興国でも起きているが、一度どこかの国がデフォルトすると、
他の国へ連鎖し、新興国危機へと発展する可能性があります。
・外貨準備高が少ないアルゼンチンは、中央銀行の介入に限界がある
既に、通貨防衛として、2018年3月1日〜5月15日の間だけでも、
約102億ドルのペソ買ドル売介入を実施しました。
・アルゼンチンの対外債務の約65%は外貨建で、通貨安への耐性が低い
ブラジルは約18%、チリは約30%と比べても、比率が高いです。
＜政府の対策＞
4月27日：政策金利を27.25%から30.25%へ上げる
5月3日：政策金利を30.25%から33.25%へ上げる
5月4日：政策金利を33.25%から40%へ上げる
5月8日：IMFに支援を要請
6月7日：IMFとの合意を発表
＊この間、通貨防衛として中央銀行がペソ買ドル売の介入を何回も実施
＜アルゼンチンとIMFの関係＞
アルゼンチンは何度も経済危機に陥り、
IMFの介入や援助によって、経済安定を目指していましたが、
2001年末に宣言したデフォルトによって、
国際的な信用が地に落ちて、国自体が大混乱となったことがあります。
IMFとしては、新興国の経済危機を防ぎたいが、何回もデフォルトしてきたアルゼンチンを
再度信用して、融資に合意できるかが、ポイントでした。
そして、マクリ政権のこれまでの政策や今後の計画が評価され、
IMFが融資に合意したのは、とても明るいニュースとなりました。
しかし、IMFからの融資を受けるということは、アルゼンチン政府として、
財務改善のコミットメントをすることになり、
できない場合は、IMFの介入が行われます。
このIMFの介入によって、2001年の経済危機が起きたと
ネガティブに考える国民も多くいます。
（写真は、マクリ大統領。）
＜IMF介入への国民の反応＞
・国民は、以前IMF介入によって経済危機が起きたとの考えもあるので、
IMFからの融資を歓迎していない
経済危機が起きたのは、IMFの介入のせいではなく、当時の政権の無計画な政策のためです。
現政権に反対する、前政権や野党によって、歪曲された事実を刷り込まれています。
・前政権のポピュリズム体制によって、負の遺産が後回しにされてきたことを知らない
公共料金の値上げで国民は苦しんでいますが、今までが安すぎたのを知りません。
緊縮財政を取らなければならないのは、今までの負の遺産を返すためで、
それを前政権が後回しにしていたことを、今も多くの国民は知りません。
・通貨危機脱却と財政再建には、国民の痛みが伴うが、それを受け入れられるか
今後の長期的なアルゼンチンの発展のためには、
現マクリ政権が引き続き、政策を実施する必要がありますが、国民全員が苦しむ必要があります。
それをどれだけ、国民が理解できて、2019年10月の大統領選でマクリ政権を再選させるかが、
アルゼンチンの大きな分かれ目となるでしょう。
以上です。
＜参考文献＞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31528540Y8A600C1MM0000/?n_cid=NMAIL007
https://media.rakuten-sec.net/common/dld/pdf/613a0c7f4bf5a6187ccec2d366931bbb.pdf
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/us180517.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30241250Z00C18A5000000/
https://hbol.jp/165655
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