前回のお話はこちら。
今回はピスタ部門に関して一言。
その前に、「ピスタって何？」という人のために、
ピスタ部門の基本的な認識を話します。
（写真は、実際のピスタ決勝の様子）
世界選手権が始まった時(2003年)は、「サロン部門」という名称でした。
元々「サロン」は「社交場」という意味であり、
「サロン・タンゴ」とは、
「みんなが集まって、踊りを楽しむ場で踊られる踊り方」と指します。
つまり、ステージ部門のような「形が決まった」「人に見せる」タンゴというよりは、
「即興性のある」「踊り自体を楽しむ」タンゴという色合いが強いです。
そのため、大会でも、流れる曲が事前に知らされることなく、
10組前後のパレハが同時に踊って、競われることになります。
（写真は、実際のピスタ決勝の様子２）
そして、2013年に「サロン部門」という名称から、「ピスタ部門」に変更されました。
これは、
「サロン時代に禁止されていたものの一部が、使用可能となった」
ということです。
要するに、
「踊りの幅が広がって、色んなことができるようになったため、
色んなことをしないと、点数が稼げない（上位に進めない）時代となった」
ということです。
「じゃあ何ができて、何ができないの？」
という方のために、「タンゴダンスアジア選手権」のルールを、
一部抜粋して以下に記します。
1）アブラソ（タンゴ・ダンスのポジション）に関して
1-1 ペアは一度組んだら音楽の続くあいだ離れてはいけない。
タンゴダンスのポジションであるアブラソを崩してはならない。
1-2 向かい合ったペアの身体がつねに相手のアブラソによって保たれている状態が正しいポジションとされる。
特定のフィギュアにおいてアブラソが伸縮することもあるが、1曲をずっと離れた状態で踊ることはできない。
1-3 全ての動きはペア2人が組んだアブラソの空間の中で行われなくてはいけない。
2）審査員は採点基準として、ペアの踊りが音楽にマッチしたものか、
又、歩く（カミナータの）スタイルを重視する。
3）ここに記載した審査基準の範囲内でバリーダ、床についたサカーダ、エンロスケ等を含めて
一般的に使用される全てのフィギュアをおこなうことができる。
4）跳躍、リフティング、その他ステージ・タンゴの振り付けとみなされるものは
いかなるものも完全に排除される。
5）ペアは、ミロンガのダンスフロアと同じように、常に時計回りの反対方向に移動していかなければならない。
後続のペアの進行を妨げてはいけない。
6）ペアのどちらも膝の線より上につま先を上げてはならない。
こちらが公式ページです。
http://campeonatoasiatico.com/regulation.html
（写真は、男性同士で踊るパレハ）
ここでポイントは(3)と(6)です。
(3)バリーダ、サカーダ、エンロスケなどが自由に使えるようになった
(6)膝の線までつま先を上げるアドルノが自由に使えるようになった
「歩き（caminata）」も重要な評価基準ですが、
歩きの美しさだけで、順位をつけるのが難しいので、
結局、審査員を魅了しやすい
「バリーダ、サカーダ、エンロスケ、アドルノなどをどうやって上手く組入れるか」
という点が、評価基準の中心になっていきます。
そうすると、
「上記のテクニックを入れたFigura（一連の動き）に走りやすくなり、みんな似たような動きになる」
ということが起こります。
もちろん、その時の流行り廃りがあるので、似たような動きになるのは仕方ないのですが、
みんな同じように見えてしまったのが、正直な感想です。
今年2018年のピスタ部門は、アルゼンチン人の誇りにかけて、
上位5位を独占し、層の厚さが出ました。
（写真は、今年優勝したJose & Carla）
幼い頃から身近にタンゴを慣れ親しむ環境があるので、
体にタンゴがしみ込んでいる人が多いのでしょう。
この時期は「年に一度のタンゴのお祭り」で、タンゴが一番盛り上がるので、
来年2019年も、とても楽しみです。
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