コロナでタンゴはなくなる?なくならない?歴史から見ても、禁止令すら効かない、人々を熱狂させる踊り Vol.417

新型コロナウイルスの感染がまだまだ世界中で拡大しており、このまま行ったら、確実にタンゴ界は縮小していきます。

じゃあ、このまま「タンゴ」がなくなってしまうのか?

答えは、「NO」です。

実は、アルゼンチンやヨーロッパで、タンゴの禁止令が出ていた時期がありました!にも関わらず、タンゴはなくなりませんでした。その歴史を少し紹介していきます。

*この記事は、現在タンゴを禁止されている地域での、タンゴの踊りを推奨しているものではありません。あくまで、タンゴの魅力を紹介しています。

 


  

今回の話は、以下の本を参考にしております。


「タンゴ: 歴史とバンドネオン(新装版)」東方出版 (2018/6/8), 舳松伸男

この本は、タンゴの歴史が非常に詳しく書かれているので、一読をオススメします。これを読むと、「タンゴはボカ地区で生まれた」という通説が、間違いであることがわかります。

筆者の舳松伸男氏は、開業医でありながら、タンゴ楽団のリーダー兼バンドネオン奏者という、非常に珍しい肩書きの方です。直接お会いしたことはありませんでしたが、日本のタンゴ音楽界では、非常に有名な方だったようです。2018年逝去。

この本に「タンゴの禁止令」について、書かれていたので、以下要約して、紹介します。

1910年代にタンゴがヨーロッパに紹介され、衝撃が走りました。それまでは、男女が身体を離して、上品に踊る社交ダンスや民族舞踊が流行っていました。しかし、旋律そのものが血を湧きたてるタンゴが現れ、男女が身体をぴったりとくっついて踊るダンスだったので、アッという間に他の踊りを圧倒してしまいました。楽団の来欧やレコードの普及により、1912年頃には、パリでは既に、タンゴは上流階級の人々の間で、「アルゼンチンタンゴ」と認識されていました。

当時は歩いていても靴の先が見えなかった長いスカートがヨーロッパでは、流行っていました。しかし、そのスカートではタンゴを踊るのに不向きだったため、タンゴが踊りやすいようなスタイルのスカートが生まれました。タンゴは、パリのファッションすらも変えてしまったのです。

<イタリア>

ヨーロッパでタンゴが流行ると、カトリック司教から、タンゴは野蛮な踊りだから禁止してほしいとの嘆願がローマ法皇ピオ十世に集まっていました。タンゴがイタリアで流行り始めると、法王は「タンゴ禁止令」を発表しました。

しかし、タンゴはイタリア系移民が生み出した踊りなので、イタリアでは歓迎され、貴族から下町のゴロツキまで、一人として禁止令を守るものはいませんでした。その後、バチカン宮殿でタンゴを踊らせた法皇は、「ベニスの踊りの方がいいが、今の若者にはタンゴが向いているかもしれない」と語り、禁止令を解いてしまいました。

<ドイツ>

軍人パーティの席上でタンゴが流行し始めました。カイゼル皇帝は「このような軟弱な踊りが流行しては、ドイツ国軍の士気に影響する」との理由でタンゴを禁止しました。しかし、陸軍参謀総長までがタンゴを踊り、皇帝の命令は無視されるのが常でした。

<オーストリア>

パリと同じく、音楽の首都であるウィーンでは、ワルツが一部になっているタンゴは、瞬く間に流行しました。そこで、皇帝フランツ・ヨゼフ一世は「タンゴ禁止令」を出したが、軍人幹部が軍服を脱いで踊る位にまで流行したので、禁止令は効を奏しませんでした。

<アメリカ>

アメリカでは、パリ式アルゼンチンタンゴがニューヨーク経由で広まりました。オハイオ州のダンス教師が「市民にタンゴという不道徳な踊りを教えた」として起訴され、「タンゴはわいせつな踊りか否か」という裁判にまで発展したが、「タンゴは異国情緒にあふれる立派な舞踏である」という判決が下され、無罪となりました。

<イギリス>

イギリスの反応は独特でした。英国王室は、「タンゴに関する審議会」を開いて、賛否の投票を行い、結果「タンゴは健全な踊りである」という結論を出しました。その後、イギリスの舞踏界に合ったスタイルを生み出し、それが現在の社交ダンスの「タンゴ」の原型になったと言われています。

<フランス>

本の中では、禁止令が出たことが明記されていませんでした。ただし、常にタンゴの道徳性について議論があった一方、一般民衆のタンゴブームには全く影響がなかったようです。察するに、ヨーロッパでブームとなる最初の場所であるフランスでは、広い階級で受け入れられたために、禁止する余地すらなかったのかもしれません。

<アルゼンチン>

1910年代に一部の禁止令が出ていたことは、この本に明記されていますが、発令中の人々の反応は、明記されていません。しかし、タンゴ発祥の地である、アルゼンチンでは、人々を魅了し、禁止令を誰も守るものはいなかったことが容易に推測されます。

 

「コロナウイルス」と「道徳性を鑑みた禁止令」との比較で、タンゴを論じるのは、正しくないかもしれません。しかし、禁止令が発令されようとも、タンゴの魅力に取り憑かれた人たちがいたことは事実です。コロナ禍で物理的に踊れない人がたくさんいる中でも、タンゴはなくならず、見事な復活を遂げ、これからも人々を熱狂させるでしょう。一刻も早く、タンゴを気持ちよく踊れる世の中になることを切に願っています。

 

 

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